上野英一です。
4月の兵庫県議会議員選挙で神崎郡選挙区から初当選させていただきました。県政に対する一般質問を、何分初めてさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
さて私事になりますが、私が政治の道に入ったのは4年前の統一地方選挙 大河内町長選挙でした。平成の市町村合併、合併特例法の規定が適用される時限である平成17年3月末まで、余す所2年となった時でした。
この時限内で市町合併を行えば、普通交付税額の算定の特例や、特別交付税や合併特例債による措置、合併市町村補助金等、各種の財政優遇措置を受けられる、一方、市町合併が進まなければ、三位一体改革で地方交付税を大幅に切り下げるというアメとムチによる政策と言わざるを得ないものでした。
残るも地獄、往くも地獄の思いで、事務事業・組織機構の見直し、人件費の削減、一般財源3割カット等々・・・毎日財政計画と睨めっこをしていました。
少子、高齢、過疎、厳しい財政状況、合併をしてもしなくても相当の行財政改革を行わなければ財政再建団体に陥ってしまうという状況は、ある意味今の兵庫県の状況でもあったと思います。
私は「大河内」大好き人間でした。自分の生まれ育った故郷の山河を、先祖伝来の田畑・森林を、そして何よりも地域の人情・温もりのある生活を残していきたいと考えていました。
地域は違っても、どなたも同じ思いだと言えます。人間が生きていくためには生業が、経済活動が基盤であることは当然ですが、少子・高齢・過疎の現状に対しては、政治がもっともっと関わらなければやっていけないと考えます。
都市部の方々から言えば「田舎もんのエゴイズム」と写るかも知れませんが、「田舎が滅べば都会も滅びる」と私は考えています。労働力、食料、そして人間が生きていくための水・空気の提供を田舎が行っています。先の参議院議員選挙でもその辺りが、選挙結果に現れたともいえます。
日本の縮図とも言える兵庫県の知事として、以上述べてきた行革と、生業を成り立たせる地域振興という2つの視点に立って、兵庫県が非常に厳しい、ある意味非常事態ともいえる状況の中で、財政再建を行いながら県民サービスの提供にどのように努めていくのか、という観点から以下の点について質問していきます。
それでは、行革の視点からお尋ねいたします。
1.まず、県民の目線に立った行財政構造改革の推進について、お伺いいたします。
今年度に入るや否や、知事は県民だよりひょうご(5月号)で、県財政の悪化と行財政改革を県民にアピールされています。特に、実質公債費比率が平成18年度に19.6%となり、全国ワースト3位であり懸念される現状にあると記載されています。
そして、7月17日定例記者会見では「新たな行財政構造改革推進方策の策定に向けた総点検の実施」を、8月1日には第1回、9月13日には第2回行財政構造改革会議を開催されました。
さらにマスコミでは、7月28日「兵庫県08年度予算一般事業費3割削減、職員3年間で1200人削減」、8月3日「井戸知事就任6年で抱負 2年間財政再建に全力」、9月14日「兵庫県2011年 行財政改革なければ財政再建団体転落も」と報じています。
この慌しい展開に、県民からすれば「震災復興で随分とお金がかかったとは思うが、そこまで厳しいのか、県当局は何をしていたのか」と思っています。
一方で、知事は今定例議会の提案説明で、10月に丹波並木道公園と県立考古博物館が、11月に県立三木総合防災公園の屋内テニス場がオープンすることを披露されましたが、そのようなハード整備が次々と進められているところをみれば、まだまだ財政が逼迫をしているようには思えません。
全戸配布されている広報誌「県民だよりひょうご」を見ておられる県民は非常に多いと思いますが、5月号の「行財政構造改革の推進」についての記述は、内容等を正確に伝えきれず、誤解を与える表現となっているように感じます。
例えば、県の実質公債費比率は全国ワースト3位となったと記載されていますが、県の財政状況が急に悪くなったわけではなく、実質公債費比率という新たな財政指標が導入されたことにより、財政状況が明らかになっただけのことだと思います。
また、震災復興が大きな負担であることには間違いありませんが、平成11年度の「行財政構造改革推進方策」とそれに続く「行財政構造改革推進方策後期5か年の取組み」を策定した段階で、震災関連の県債の満期一括償還が平成17年度から本格的に始まることをはじめ、震災復興がらみの財政への影響は織込み済であった筈です。
さらに、国家公務員と比較した地方公務員の給与水準を示す「ラスパイレス指数」について、18年度から導入される地域手当を加味して算出した実質的な指数を見ると102.5となっており全国で6番目に高い水準になっていると記載されており、いかにも県職員給与が高いことが財政悪化の原因とも取れる表現になっていますが、本県の官民給与比較は県人事委員会の報告どおり同水準となっており、地域手当についても人事委員会が調査中で継続課題のはずであります。
9月13日の第2回行財政構造改革会議の資料を私は、9月28日に初めてみたのですが、標準財政規模に対する割合の類似団体比較では、人件費、普通建設事業費(補助・単独)、公債費、起債残高が記されていましたが人件費を除いて何れもが高い水準にあり、むしろ人件費は△0.5% △64億円と記されています。
私は、人件費が高い低いと言っているのではありません。
県民に対する広報のあり方を言っているのです。
本題に戻りますが、確かに、財政悪化は、
①震災による税収の落ち込み、
②震災復興のための県債の発行
③三位一体改革による地方交付税の削減
④国の制度改正等に伴う福祉関係経費
などの義務的経費が増加を続けていることが原因であると理解しますが、国政がらみの部分は先が読み難いとしても、県は見通しが甘すぎたのではないかと思います。
これでは県民の納得も得にくく、新たな行財政構造改革推進方策は、もっと厳しい目で望んでいただきたいと思います。
知事は新たな行財政構造改革推進方策の策定に向けた総点検を実施中でありますが、新聞でも報道された一般事業費の3割削減、職員数を3年間で1200人削減などが実施されれば、県民生活に多大な影響を与えることとなります。
県民の理解を得られるよう、策定中の段階から十分に説明責任を果たすことが求められます。また、学識経験者、関係団体代表、市町代表、県議会代表から構成される「行財政構造改革会議」が設置され、新たな行財政構造改革の方策の策定に向けて幅広い観点から審議がされています。
しかし、もっとも影響を被るのは県民なのですから、限られた財源の中でどの分野あるいは事業を優先してほしいのか等、十分に県民の意見を聞き、新たな行財政構造改革推進方策に反映する必要もあると考えます。
そこで、財政状況や行財政構造改革について、県民への説明責任をどのように果たしていくのか、また、県民の意見をどのように反映しようとされておられるのか、お伺いいたします。
2.次に、厳しい財政状況のなか、県民の要望・ニーズに応えながらどのように県政を推進されるのかを具体的な事例の中でお尋ねしたく、県道改良事業等の整備の考え方についてお伺いします。
郡部では、生活基盤とりわけ道路整備、道路改良事業の要望が多くあり、公共・県単事業で整備して頂いていますが、行財政構造改革推進方策の策定に向けた総点検の実施をみれば、県単事業費が削減されるのではないかと心配するところです。
神崎郡では、合併後、神河町・市川町・福崎町の3町が新たな枠組みとして残りました。これからは3町一体となった神崎郡の町づくり、広域行政化が必要と考えますが、地域間の交流を促進し、地域経済の発展や活力のある地域づくりを支えるために道路整備は重要です。
この地域において、住民の長年の懸案事項であるJR福崎駅前開発は、福崎町の玄関口だけでなく神崎郡の玄関口として、神崎郡の発展にとって無くてはならないものです。
まず手始めとなるのが県道甘地福崎線の道路改良です。ここは県立福崎高校をはじめ小中高の通学路ですが、全幅5m程度の道路で歩道も無く、朝夕のラッシュ時には生徒と車が行き交い、大変危険な状況となっています。
北側から県単事業で道路の拡幅事業が進んできており、これからいよいよ駅前の約550mをどう整備するかという段階にきていますが、道路沿いに店舗が多くあり、物件を移転させる必要があります。物件移転には多額の費用を要することから、整備がなかなか進みませんでした。
しかし、今、(財)ひょうご産業活性化センターの商店街競争力強化推進事業やまちづくり技術センターの支援事業を活用しながら、商工会長、地もと町会議員、地元住民で組織する町づくりグループの議論や活動などが盛り上がってきています。
また、駅前に7千坪の社有地を持つ企業では、工場の移転と、それに伴う新たな跡地利用計画が浮上しており、地元企業として利益の一部を地域に還元したいとの思いもあって、企業側からこの区間の道路改良事業の費用を一部負担したいという意向が示されています。長年の懸案事項の前進、解決が期待できる状況となっています。
このように地元の意見がまとまり、地元企業の経済的支援まで得られるといった条件のそろった道路から、機会を逸せずに優先的に事業を進め、長年の地域課題の解決を図ることは、県財政の厳しい折に、民間活力の活用ともいえる、理に適った考え方ではないかと考えます。
当然のことながら、県内には県民の要望の強い道路改良事業が数多くあり、事業推進に当たっては、財政状況を踏まえ「選択と集中」を基本に、費用対効果等を考慮して、優先順位があることは承知いたしていますが、福崎駅前開発、県道甘地福崎線の改良は、この時機を逸するわけにはいかないと考えます。
そこで、地域住民や企業の合意や協力が整っている場合に優先順位をどう考えるのか、道路整備の考え方について、御所見をお伺いいたします。
3.次に、厳しい財政状況の中での積極的な収入の確保という面から、公有財産の処分と有効活用についてお伺いします。
平成11年度に策定された「行財政構造改革推進方策」では未利用地の売却処分を推進すると記載されており、その効果額を平成12年度から9年間で47億円としています。売却実績は平成12年度からの4年間で、77件、12億3千8百万円ですが、「行財政構造改革推進方策後期5カ年の取り組み」に基づく売却実績をみると、平成16年度から18年度までの3年間で101件、27億7千8百万円となっています。
とりわけ一昨年度、昨年度の売却件数は、例年の2倍程度となっており、積極的な売却が行われているとみております。
このような普通財産の売却だけでなく、県の財政状況を考えると、行政財産についても、利用状況や必要度に応じて、売却や貸付など有効活用を考えるべきところまで来ているのではないかと思います。
すでに統廃合や計画の変更等により使用しなくなった、あるいは利用状況が低いといった公共施設やその敷地、あるいは建設用地などの行政財産について、公共性や必要度の低いもの、代替性のあるものは、例えば、県民感情を考えれば安価な賃料で入居できる職員住宅なども対象になるかと思いますが、普通財産への変更のうえ売却処分をする必要があるのではないでしょうか。
また、今年3月1日から施行された「地方自治法の一部を改正する法律」(平成18年法律第53号)により、行政財産の貸付等の規制が緩和され、この改正に基づき、庁舎の空き床や敷地の余剰スペースを行政財産のまま民間に貸し付け、収益確保とともに管理コストの削減を図っている自治体もあります。行政財産の処分、あるいは利活用についても、検証が必要です。
道路整備などの事業の中で買い上げた土地についても、事業変更等に応じた処分など、効率的、弾力的な運用も必要ではないかと考えます。
例えば、用地買収の際に1筆全部を買収し、広く街路・緑地として整備したけれども、後年、それが不用になったとも思えるケースが県下にあります。隣接をする店舗の所有者が、その緑地について、分譲を希望した場合、行政が財産として所有、整備したものはまず活用することが優先され、安易に処分することは考えにくいことだとは想像いたしますが、民間においては可能な話だと思います。おそらく県下には同様の箇所が多くあると思われます。
このような場合、公平性を保ちながら、住民の要望に対応するべきではないか、と考えます。
そこで、行財政構造改革の推進という観点から、県の所有する公有財産について、今後、どのように処理あるいは活用していこうと考えておられるのか、基本的な方針をお伺いいたします。
4.「選択と集中」により行革を推進していくと伺っていますが、まさに「集中」させるべきところとして、地域医療の確立と県の役割についてお聞きします。
県内でも、産科や小児科、麻酔科など特定の診療科の医師不足が顕著で、診療科の休止や廃止、受け入れ患者数の制限、夜間救急の受け入れ制限など、地域の医療体制が維持できない状態になっています。
北播磨地域の公立病院でも医師不足から休診する診療科が相次いでいる状況に、神戸大学医学部附属病院は、5つの公立病院を1つの中核病院に統合し、医師を集中派遣する構想を北播磨5市1町に提案していますが、中核病院の設置候補とされる市以外の市町はそれぞれ反対の姿勢を示し、行き詰った状況となっているようです。
丹波地域でも、丹波地域医療確保対策圏域会議を立ち上げ、検討がされていますが、県立柏原病院と柏原赤十字病院への丹波市の支援のあり方をめぐる問題も生じ、また、兵庫医科大学篠山病院は存続か撤退かが不明なままとなるなど、丹波地域全体としての医療確保対策は見通しの立てられない状況と見受けられます。
例えば産科に着目すると、昨年7月に神戸新聞社が行った調査では、県内41市町のうち12市町で出産のできる病院・診療所がない状況と発表されています。
出産の取扱いを休止した病院を拾ってみると、平成18年度に西宮市立中央病院、市立加西病院、高砂市民病院、神鋼病院、柏原赤十字病院、平成19年度に入ると姫路医療センター、平成20年4月からは市立宝塚病院が休診予定となっています。
出産の取扱いを制限した病院も、平成18年度に関西労災病院、今年度には加古川市民病院、県立柏原病院となっており、医療体制の確保対策が進んでいるとは感じられません。
患者は身近な病院や診療所で医療が受けられなくなれば周辺の病院に流れ、今度はその病院が集中する患者に過剰負担となり、休診に追い込まれます。
また、低次の保健医療機関が休診となれば、より高次の保健医療圏域の病院が一次、二次医療まで担うことになり、本来担うべき高度専門医療等を提供する機能を充分に果たせません。
一次、二次の保健医療圏域で出産を取り扱っている病院を維持する、または再開できるよう、さまざまな補完的取り組みを支援していく必要があります。
例えば、市立伊丹病院が本年度から始めた「院内助産」のような出産を支える多様な取り組みが県内で広がるよう、各病院の人材確保面、施設整備面等を積極的に支援していくことも考えられます。
「兵庫県保健医療計画」には、「県民が必要とする各医療分野において、医療機関相互の役割分担と機能連携を進め、良質で効率的な医療提供体制の確保をめざす」と明記されています。
地元の医療関係者や行政が、まず地域の医療提供体制の確保について意見をまとめるべきだという理屈もあるかと考えますが、病院の設置者が異なり、各市町の思いが交錯する中ではまとまりそうにもなく、一方で、医療体制は崩壊の危機に瀕している状況をみると、県は静観している場合ではなく、調整役として主導して取り組むべきではないかと考えます。
併せて、良質で効率的な医療を提供するために、新たな補完的取り組みを、病院任せ、地域任せにせず、積極的に進めていくべきだと思います。
そこで、地域医療の確保について、県の役割をどのように考え、どのように対応していこうとされているのか、お伺いします。
次に、生業の成り立つ地域振興という視点から2つの質問をさせていただきます。
5.まず、中山間地域における農業経営についてお聞きします。
今年度から原則として経営面積が4ヘクタール以上の認定農業者と20ヘクタール以上の集落営農組織を対象に補助をする品目横断的経営安定対策が導入されました。
今後も海外との競争が激しくなるのは避けられないなかで、やる気と能力のある農家に支援を集中するなど、強い農業を育てていこうという方向は理解できます。
日本の農業において耕地面積の4割を占めながら、面積が小規模で、傾斜地が多い等の条件から農業生産性が低い状態となっている中山間地域においては、生産性の向上のために集落営農のウエイトを高めていこうと国はしていることも理解いたします。
私の地元神崎郡でも中山間地域が多くあり、20数年も前から転作を行うために、集落営農組織の育成に取り組み、組織数にして68となっています。
しかしそれは、米価が下がり市場競争原理が持ち込まれる中で、少しでも補助金を得ながら何とか営農を維持していこうとしているからであります。
営農だけでなく集落そのものの維持でもあります。
中山間地域では、農業者の67%が高齢者であり、高齢化の進展とともに集落営農への意欲は減退傾向にあるといわれています。組合長をはじめとする中心的な役員の献身的な努力で、維持をしていると言っても過言ではありません。
また、中山間地域は、農業や集落機能の維持によって、水源の涵養、洪水の防止、土壌の浸食や崩壊の防止など多面的機能も維持しており、多くの県民の豊かな暮らしを守っています。
しかし、過疎化や農業者の高齢化の進展によって、担い手の減少や遊休農地の増加も著しく、集落の共同活動も停滞しつつあり、地域の存続自体が大きく懸念されています。
品目横断的経営安定対策においても中山間地域には経営規模の緩和などの支援策がとられていますが、今後も集落営農が進まず、思うような収入を得られない農業から、更なる高齢化によって撤退が進めば、多面的機能も維持できなくなります。
中山間地域の小規模農家が営農を続け、いきいきと暮らせるような方策が必要です。
例えば、核となる農家がいない地域では、小規模農家は集落の農地の集約化を進め、農業生産法人や企業などを招いて、その集約した農地での農業経営を一括して委託する。
地元の小規模農家は農作業受託組織を育成して一部生産を請け負う。
県はそのような取り組みを支援する。あるいは、リーダーとなりうるUターン、Iターン就農者、域外からの新規就農者などやる気のある優秀な人材を確保できるよう支援を充実する。
そのような工夫をしないと、中山間地域での農業の現状と、国や県が描く集落営農による農業振興とは乖離が大きすぎて、今までと同様、集落営農はさほど進まないと考えます。
また、中山間地域等直接支払制度などの活用をはじめ、小規模な高齢農家が営農を継続するための各種対策の強化も必要です。
そこで、集落営農への舵取りを基本としながら、中山間地域における農業経営をどのように推進しようと考えておられるのか、お伺いします。
6.次に、有機農業の推進についてお聞きします。
今年7月31日、豊岡市で、48年ぶりに自然条件で誕生したヒナが巣立ちました。県が昭和40年にコウノトリの人工飼育を開始して以来、地域のみなさんの協力を得ながら、保護・増殖に努めてきた経緯を思うと、但馬の空を翔けるヒナの姿に感動を覚えました。
コウノトリ野生復帰の取り組みを支えるために、この地では、エサ場となる農地において農薬や化学肥料に頼らないで農産物を生産し、同時に、多様な生物が生育できる、「コウノトリを育む農法」が確立しています。
ここで生産された米は、「ひょうご安心ブランド」の承認を得て販売されていますが、生産段階で手間がかかる分、価格的には割高になるにもかかわらず、昨今、消費者の食の安全・安心への関心が高まるなか、好調な売れゆきとなっていると聞いています。
「コウノトリを育む農法」の取り組みは、すばらしいものだと考えています。ぜひ、有機農業に発展させて県内各地に広げてほしいと思います。
といいますのは、県内の中山間地域でも、過疎化や少子高齢化の進展や農業の後継者不足が顕著ですが、地域に有機農業を導入できれば、生産物は安全・安心な農産物として高い付加価値が得られ、生業としての農業が可能になるだけでなく、多くの団塊の世代の退職者が農業・田舎暮らし、それも有機農業に対し関心を持っていますので、「団塊の世代」の農業への参加やIターンなどもが期待できますし、農薬を散布しないことによるホタルの復活などは、観光資源として新たな交流の機会を生みだすと考えます。
このように有機農業の取り組みは、地域の活性化につながると期待されるからです。
昨年度から大規模地区では環境創造型農業の実践が進められていると聞いていますが、例えば、私の地元の市川町上牛尾岩戸地区など、三方を山々に囲まれた、渓流沿いの谷筋一体は、ある意味周りと隔離できる条件があり、もちろんそこに暮らす人たちの同意が前提ですが、無化学肥料・無農薬栽培の有機農業を行うモデル地域として最適だと思われます。
山間地ほど、有機・無農薬農業に対してはむしろ条件が整いやすいのではないかと思いますので、小規模な地域も対象に、積極的に地域で展開してほしいと考えます。
おりしも昨年12月に「有機農業の推進に関する法律」が施行され、その規定に基づき、県は有機農業の推進計画の策定に努めることとされています。今年度から概ね5年間を対象に県の基本方針を策定される予定かと思いますが、このような視点での有機農業の推進を盛り込んでいただきたいと考えます。
そこで、有機農業について、今後、どのように進めようとお考えなのか方向性をお伺いします。
最後に、先の6月定例会で先輩議員の石川憲幸議員が白洲次郎の紹介をされました。白洲次郎は、ケンブリッジ大学で「プリンシブル・原理原則」という精神を学び、日本国憲法草案やサンフランシスコ条約・日米安全保障条約の締結に深く係わった。
そして、GHQに対し「我々は戦争に負けたのであって、奴隷になったのではない」と主張し、「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめたと紹介されました。私は、非常に興味を持ち5冊の本を買い読ませていただきました。
著書「プリンシブルのない日本」の中で「現在の新憲法は占領中米国側から「下しおかれた」もので、憲法なんてものは、国民の盛り上がった意思で作るべき本質のものだと思う」とし、さらに、「これも憲法にはずぶの素人の米国の法律家が集まってでっち上げたものだから無理もない。
しかし、そのプリンシブルは実に立派である。
マッカーサが考えたのか幣原総理が考えたのかは別として、戦争放棄の条項などはその圧巻である。押し付けられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受け入れるべきではないだろうか。」と書かれていましたが、まさしくプリンシブルたるゆえんだと感銘を受けましたので紹介させていただき、同時に私もプリンシブルに議会活動を務めていく決意を申しあげ、質問を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
知事・当局の答弁
1.県民の目線に立った行財政構造改革の推進について(井戸知事答弁)
本県では、阪神・淡路大震災からの創造的復興を進めるため、平成11年度に策定した行財政構造改革推進方策、そして、その後の後期5ヵ年の取り組みに基づき、中長期的な視点に立って行財政運営に取り組んできた。
この財政運営の指針としては、起債制限比率が15%台を超えないこととしていたが、実績は、ほぼ13%台で推移してきた。この枠組みがあったからこそ、本県負担額だけで2兆3千億円を上回る巨額の財政需要に対応しつつ、県民の要請に応える復旧・復興事業を機動的に展開できたものと考えている。
ただ今回、毎年毎年の財政運営の指標であった起債制限比率に加えて、県債管理基金の積立不足など、中期の財政構造をみる指標として実質公債比率が導入されたことに伴い、財政構造上の課題が浮き彫りになってきたといえる。
しかも、復旧・復興事業の財源として発行した県債の残高が8,500億円にのぼり、その償還が他府県にない大きな負担となるとともに、県債管理基金の活用により、大幅な積立不足が生じている。
今後は、基金活用はなかなか従来と同様には難しい実情にある。その上に三位一体改革等による地方交付税の大幅な削減、兵庫県を例にすると、平成15年度と19年度との地方交付税の総額を比較すると、単純に1,700億円の減額、税の伸びを考慮した実質的な減額は700億円の減額となっている。
国・地方を通じた歳出・歳入一体改革により、県債発行の抑制等が実施されてきているので、行財政構造改革の枠組で予定していた財源額を著しく下回っており、本県財政がきびしくなっている所以である。
また、給与の問題についても、国との比較では、地域手当導入時において、従来の調整手当を暫定的に支給することとしていることに伴い、2.0%程度、その他手当てで0.5%程度、ラスパイレス指数が上回っている。
機構や定員については、団塊世代の大量退職がここ数年続くことから、行政サービスとの関連を含めながら、この時期に十分検討する必要があると考えている。
このように、震災で悪化した財政を改善するためには、相当厳しい改革に取組む必要があると認識している。行財政構造改革のめざすところは、新しい兵庫の基盤づくりであり、兵庫の将来をしっかりと見据え、県民の要請に応える施策展開とその体制を整備していかなければならない。
それだけに、県財政の現状と課題を明らかにしたうえで、改革の目的や今後の施策展開、見直しの理由等を明確にして、県民の十分な理解と協力を得ていかねばならないと考えている。
すでに5月に広報月間の重点として、県の財政を取り上げ、「県民だよりひょうご」や「ニューひょうご」など県の広報媒体を活用したり、テレビ・ラジオ番組等で本県財政の現状と課題や改革の必要性等について訴えてきたが、今後も様々な機会を通じて、協力を県民に訴えていく。
また、県議会の「行財政構造改革調査特別委員会」での調査・審議はもとより、市町・関係団体等からの意見も伺いながら、新たな改革検討を進めるとともに、改革案がまとまれば、それに対するパブリック・コメントを実施し、幅広い県民の理解を得るなど、県民一体となって改革を進めていく。
2.県道改良事業等の整備の考え方について(井上県土整備部長答弁)
1.道路の事業着手の優先順位については、安全・安心の確保、快適な生活環境の創造、渋滞解消など様々な観点から必要性を検討した上で、費用対効果や事業執行環境等を加味し、総合的に評価している。また、ご指摘の地域住民の合意形成等については、事業を執行していく上での重要な要素であり、事業着手の用件の1つとして捉えている。
2.費用の一部負担等の民間協力については、民間開発が地域活性化に資する場合、優先度が向上する1つの要因と考える。しかしながら、福崎駅前の県道甘地福崎線の場合、市街化区域内で沿道には民家が連担しており、これまで駅周辺まちづくり計画の熟度も低かったため、社会基盤整備プログラムにも位置づけられていない。従って、事業着手には、駅前開発計画も含めた道路整備計画についての住民合意やまちづくり計画としての位置づけが先決と考えている。
3.このような条件を整えた上で、ご指摘のような民間活力も評価要素の1つとして捉え、必要性や費用対効果、まちづくり計画との整合性を総合的に勘案の上、優先順位を判断し、効率的な道路整備に努めていく。
3.公有財産の処分と有効活用について(牧企画管理部長答弁)
行財政構造改革においては、自主財源の確保が重要な課題であり、税収の確保はもとより県が保有している財産の売却も財源確保対策の一つの柱になると認識しております。
これまでも未利用地財産については、順次売却を進めてまいりましたが、今後取り組んでいく行財政構造改革においても、事務事業や公的施設等の見直しを抜本的に進め、利用状態の低い土地・建物や統廃合が可能な施設跡地等については、積極的に売却を推進したいと考えております。
また、県有財産の売却に当たっては、広く応募の見込まれるインターネット入札や、不動産売却の専門的なノウハウを持つ民間組織の活用についても検討を進め、できるだけ早期に、できるだけ高い価格で、できるだけ多くの未利用財産を売却できるように努めてまいりたい。
さらに、賃料の高い民間ビルに入居している県の外郭団体等を県有施設に移し替えたり、庁舎の一部を民間に貸与するなど、今まで以上に県有財産の有効活用を図り、自主財源の確保に努めてまいりたいと考えています。
4.地域医療の確立と県の役割について(井戸知事答弁)
地域医療におきまして県としては、まず、医療需給のバランスを見る医療計画を策定して調整を図っておりますし、また第二に、二次医療圏域や県全体の必要な医療の確保のための支援や調整を行っております。第三に、市町立病院間の、あるいは県立病院の広域連携の推進などに取り組んでおります。
例えばすでに、各設置主体からの要請に基づいて、北播磨圏域での公立病院の集約化を検討しておりますし、丹波圏域での中心となる3病院(県立柏原、柏原赤十字、兵庫医科大学篠山病院)について必要な調整・支援を行っています。
また、但馬圏域における公立9病院の医療再編への支援や、阪神北圏域での阪神北広域小児急病センターの共同設置にむけた市町間の調整など、県の調整役としての取組みに具体的な成果が得られつつあるところです。
ご指摘の全権的な課題となっております産科医療の確保については、女性医師の再就業支援センター事業等による産科医師の確保を図って参ろうとするほか、出生数、医療機関までのアクセス時間、医師数等を考慮しまして、患者の安全を確保することを基本、既存の二次医療圏域にとらわれず、1時間医療圏域、アクセス時間約1時間程度の診療圏を設定して運用する。
あるいは、高速輸送機関、ヘリ搬送など踏み込んだ高速輸送機関の活用なども含めて、医師の集約化・医療機能の重点化について検討を進めているところです。
また、昨年度、医療審議会の地域医療対策部会のもと策定いたしました「地域医療確保対策」に基づき、産科医療も含めた地域医療の確保に引き続き万全を期してまいりますので、よろしくご指導をいただきたいと存じます。
5.中山間地域における農業経営について(井戸知事答弁)
品目横断的経営安定対策として取り組んでおりますが、これまでの実績をみますと、平成21年度の認定農業者数の目標317に対して300が加入し、集落営農組織も300の目標に対して8割の244が加入しているという状況で順調に進んでおります。
しかし、ご指摘のように中山間地域は、概して不整形で小さな棚田が多い、平地に比べて作業効率や生産コスト等の課題を抱えていることから、これら地域の農業経営を考える場合、地域の特性を生かした集落営農組織の育成が必要だと考えます。
本県では、個々の農家が描く地域の将来像や地域の話し合いをもとに、集落でのプラン作りを進め、集落営農リーダーの育成と組織作りを支援しています。
既に県内には、集落営農組織を基礎に、こうしたリーダーを中心とする地域特性を生かした取り組みが行われています。
例えば、神河町の山田営農組合では、水稲等の受託作業と棚田を利用したオーナー制リンゴ園を開設していますし、また、多可町の岩座神農会では、棚田オーナー制度と滞在型市民農園のドッキングをしておりますし、養父市のおおや高原有機野菜部会では、生協との契約栽培を前提とした新規就農者の受け入れと土づくりからの栽培指導が行われたりしております。
これらの先進的な取組みをモデルとしまして、今後、集落協定をもとに集落活動計画づくりや、耕作放棄の防止活動を集落自らが実施するように位置づけて、中山間地域等直接支払交付金制度等を活用し、環境創造型農業や女性・高齢者の能力を活用した農産物加工や都市農村交流型農業など、地域の特色を生かした集落営農組織の育成・強化を通じて、中山間地域の農業振興に取り組んで参りますので、今後とものご指導をお願いいたします。
6.有機農業の推進について(西村農林水産部長答弁)
環境保全と食の安全への県民意識の高まりに対応するため、本県では平成4年以降、環境負荷を軽減し、安全安心な農産物を生産する環境創造型農業を推進してまいりました。
特に、農薬や化学肥料の使用を極力抑えたコウノトリ育む農法を但馬地域で展開し、平成15年度には0.7haであった作付面積が本年度は約200haまで増加している状況でございます。
このような取組みを県下に拡大するため、現在、10haの大規模地区を10箇所、将来大規模地区の拠点となる1haの地区を11ヶ所設置し、環境創造型農業の普及を図っております。
一方、昨年12月に制定された「有機農業の推進に関する法律」に基づき、5年以内を目途に策定することとされている県の有機農業推進計画につきましては、本県が進めてきた環境創造型農業を基本に中山間地にも配慮し、県および市町における推進体制の整備や技術マニュアルの作成と普及のほか、地域ぐるみで取組むモデルタウンの育成などを内容とした計画を、できるだけ早期に策定したいと考えております。
今後、この有機農業推進計画に基づく事業を含め、環境創造型農業の更なる推進に取組んで参りたいというふうに考えております。
2007年11月23日(金) | カテゴリー: 一般質問等 |
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